相続(お子様がいない方の相続 遺言書の重要性 遺留分がない)

相続(お子様がいない方の相続 遺言書の重要性 遺留分がない)

 生前、ご主人は、「今度こそ退院したら、遺言書を残そう」と、話されていたそうです。

でも、間に合いませんでした。遺言を残す前に気力がなくなってしまったようです。

 

 遺言を残すお気持ちがあったのになぜ残せなかったのか?

 

 今、改めてご主人の心の内を想像してみたいと思います。

 お子様のいないご夫婦でしたので、「奥様も大切だが、甥っ子のことも気になる」と生前話していらっしゃいました。つまり、『財産を全て奥様に相続させる』ことに、奥様が亡くなった後の相続では、奥様の兄弟の相続権があり、甥に財産を相続させられない、という心配があったようです。

 

でも、甥に相続させる遺言を有効にすることはできませんので、その迷いから、遺言を残すことをためらってしまったのだと思います。

 

奥様に全ての財産を相続させて、その後甥に財産を相続させる方法は、いわゆる家族信託手法を用いれば叶うことは、私からもお伝えしましたが、こちらは、遺言ほど世の中に浸透しておりませんので、きっと疑心暗鬼だったのだと思います。

 

幸い相続税で生活に支障が起きる事態にはならない相続税課税評価額でしたので、私自身もあまり強くは遺言や信託のことをお勧めしませんでした。

 

 でも、今は後悔しています。

 

それは、不動産や口座や株式の名義変更手続きで想像以上にハードルが高いことを痛感しています。つまり、遺言がないと原則、全ての手続きにおいて、法定相続人から同意、つまり、署名と実印での押印に加え印鑑証明書の添付が必要となるのです。更にハードルが高い理由が、ご主人のご兄弟が高齢で、認知症や亡くなったりして、更に相続が重なり複雑になります。更に更に相続人が法定後見人の場合、相続放棄を家庭裁判所が認めるか、論点も出てきます。

 

 遺言、あるいは信託を組成していれば、兄弟には遺留分がないので、成年後見に対しても悩まずに済みました。

 

 お子様がいらっしゃらないご夫婦の場合は、遺言を残すことや家族信託の組成を強くお勧めする次第です。

 

志村 孝次